ささみカレー vol.4「渋谷・メキシカンなお野菜カレー」
メキシカン野菜たっぷりの某ボリューミーカレー (コーヒー・スープつき 1100円)
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」/Manchester by the Sea/監督 ケネス・ロナーガン
制作:2016/アメリカ/137分
監督・脚本:ケネス・ローガン
あらすじ
アメリカ・ボストン郊外に住む孤独で無口でな男、リー。便利屋として生計を立てていた彼は、心臓発作で突然亡くなった兄の子供の後見人になる事に。16歳になる甥を育てようと彼と向き合おうとするものの、なかなか甥や周囲の街の人とも馴染めず、衝突も繰り返し、頑なに他人に心を閉ざしたまま。それは、リーが背負ったある悲劇的な出来事があったためであった。
2017年度アカデミー賞主演男優賞、脚本賞受賞。
孤独な男と、曇天と、寂れた港
地味で静謐です。決して豊かとは言えない港湾都市(割と曇天)に起きた悲劇と、それを背負って生きなければなれない人の、その人しか分かり得ない孤独に寄り添ったしっとりドラマ。静かに心動かされます。全体的なしみったれ感(良い意味で)が、陽なアメリカから生まれたとは思えない。(孤独なおじさん、さびれた港湾地区、曇天・・ささみの好きな要素です)
主人公リーは、ある出来事をきっかけに生まれた街マンチェスター・バイ・シーを離れていたが、亡くなった兄の甥の後見人になるため、故郷に戻ってくる。以前は仲間とワイワイ遊んでいた故郷、でもその場所は彼にとっては辛い場所。そこで、兄が遺した16歳の多感な甥っこを育てようとするも、飲み屋でケンカはするわ、甥っ子ともぶつかるわうまく行かない。リーに、一体何があったのか?
これ以上ぴったりな役者はいない。ケイシー・アフレックのハマりぷり
その悲劇は、中盤に観客にも説明される。うん、重い・・・。それを背負うのツライ・・・辛すぎる・・。やたらケンカばかりしたり、他人に暴言はいて自暴自棄になっているのも急にわかる気がする・・と事情を共有したのちは、彼は果たして、そんな悲劇の淵から再生できるのか??観客はじっと見守る事になります。
常に目が死んでいるリー。猫背、ボソボソ話すリー。いろんなものを背負いすぎて、別に生きたくて生きてないっす的なオーラが全身から出ています。この「消極的死に感」を出せるアメリカン役者、ケイシーアフレック以外にそうそういないような気がします。もともとマット・デイモンがやるはずだった役だそうですが、このしみったれたリアリティは彼にしか出せないものだったと思います。
見る人それぞれのちょっとした傷に寄り添う物語
物語の主題は、リーが絶望的な悲劇から救われて行くのか?ということに当てられています。リーは16歳の多感な甥とぶつかりながら向き合うことで、ほんのわずかの変化なのか、何か新しい感情も見えてきます。どんなにツライことで傷ついて心を閉ざしても、また自分から開いて他人と関わる事でしか、その傷は癒えないんだなと、ながーく淡々としたドラマの中で感じさせれらました。傷は完治しなくても、一旦放置はできる、そんな風に思いました。
この映画を見て・・・ささみのひとこと
どこのシーンのことかは、見たらわかります。
「ナイスガイズ!」/ The Nice Guys/監督 シェーン・ブラック
「ナイスガイズ!」
制作:アメリカ/上映時間 111分
出演:ラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリング、アンガーリー・ライスホリー・マーチ、マット・ボーマー、マーガレット・クアリー
あらすじ
酒ばかり飲んでいる、シングルファーザーの探偵ホランド・マーチ(ライアン・ゴズリング)と、暴力的だけど優しい示談屋をしているオッサン(ラッセル・クロウ)がコンビを組み、失踪したとある少女を探すことに。少女の失踪の背後には自動車産業の闇が隠れており、二人は政府も絡んだ巨大な陰謀に徐々に巻き込まれていく。70年代ロサンゼルスが舞台にした愉快なノワールコメディ映画です。
ささみ史上、ベストゴスリング映画
とにかく笑えます。ライアン・ゴズリングの演技が最高に光っています。同時期公開「ラ・ラ・ランド」より、ささみ的には断然こちらをベストゴズリン映画としてオススメします。
ゴズリング演じる探偵マーチは、とにかくダメ男。酒浸りでマヌケ。
わけわからん凡ミスを連発し、頼りないのになぜか憎めない。この愛すべきキャラクターを作りあげたライアン・ゴズリングのコメディセンスと身体力がすばらしいと思います。イケメンなインテリ役も多いゴズリングですが、こういうマヌケ役をやったときのおとぼけゴズリンパワーの破壊力は、底知れないです。コメディを演じきれる役者は本物な気がします。
利巧な娘が、ダメな父を守る
ダメなゴズリングを支えるのが、彼の娘役のアンガリー・ライスちゃん。父親の凡ミスを冷静にナイスカバーして行きます。でもちょっとした時に、ティーンらしい弱さを見せるのですが、その強さと弱さのバランスが絶妙にかわいい。父親の前は強がる一方、母親が焼死した空き地で、一人で読書をする姿が切ない。「だめな父と利口な娘」のバディものとしても楽しめて、親子でもあるけど親友同士にも見える、この二人の関係性が見ていて心地いい。
ずっと見ていたい新たなシリーズものになること期待
とにかく本編と関係ないミスや下ネタでずっと笑っていられるけれど、二人が巻き込まれる自動車産業と政府も絡んだ暗部は、社会風刺にもなっています。自国の産業発展を優先するばかりにないがしろにされる環境問題、それに抗うヒッピー、そして何にも属さず負け犬なダメな私立探偵だけど優しさには溢れている男2人・・・。とにかく映画として面白い要素に溢れたコメディ映画。真剣に見なくても家でDVDをかけっぱなしにしていたい映画です。
この映画をみて・・・ささみのひとこと
どこのシーンのことかは、見たらわかります。
ささみカレー vol.3 「世田谷・お野菜ヒリヒリカレー」
世田谷の某タイカレー屋の某野菜カレー 700円
(見た目よりも、ちょっと辛め)
ささみカレーvol.1 「世田谷・チキンカレー」
世田谷の某肉バルで食べた某チキンカレー
(サラダ・コーヒー付き 500円)
「レゴバットマン ザ・ムービー」/The LEGO Batman Movie/監督 クリス・マッケイ
制作:2017年/アメリカ/105分
声の出演: ウィル・アーネット/バットマン、ブルース・ウェイン
マイケル・セラ/ロビン、ディック・グレイソン
レイフ・ファインズ/アルフレッド
ロザリオ・ドーソン/バッドガール、バーバラ・ゴードン
ザック・ガリフィアナキス/ジョーカー
あらすじ
「レゴ」版のバットマン映画。
犯罪都市ゴッサムシティを悪者から守るヒーロー、バットマン。正義の味方である一方、素顔は寂しがりやなのに、不幸な生い立ちのせいで、他人に心を簡単に開けない気難しい一面も。そんな心寂しきバットマンの周りには、一風変わった少年ロビン、バットマンの悪敵ジョーカー、両親のいないバットマンを幼い頃から育てる執事のアルフレッドなど愉快な仲間たちがいる。ある時、悪敵ジョーカーがまた、ゴッサムシティを大変な目にしてしまい・・・。
おもちゃのレゴで繰り広げられる、れっきとした「バットマン」映画
レゴを題材にした映画としては、前作「LEGO(R)ムービー」がアメリカでも大ヒット。ポップなレゴ映画なのに、大人も意外に考えさせられる内容で、最後には泣けるわ、ギャグも冴えてるわで、かなり評価の高い映画でした。2作目のレゴ映画となる今回は、あの「バットマン」が題材。今回も、「レゴブロック」という身体性?を生かしたギャグや小ネタ満載で笑いつつも、最後には涙なしでは見られない、なめてはならない恐るべき映画になっていました。
「バットマン」といえば、クリストファ・ノーラン監督によりリメイクされた「ダークナイト」シリーズの大大ヒットが記憶に新しいですね。このノーラン流バットマン、2005年から3作品続きましたが、映画としては重め&暗めな印象で、特に2作目「ダークナイト」では、故ヒース・レジャーによる「ジョーカー」役の怪演と共に、「悪とは何か?」「正義とは何か?」という題材をずっしりと描いていました。それはそれでとっても面白くて傑作なのですが、これによりバットマンシリーズ=シリアス路線が定着化してしまいました。
「ジョーカー」のキャラが、良い意味で崩壊
ところがどっこい、今回の「レゴバットマン」は、とにかくポップで明るいです。ノーラン版のシリアスなジョーカー像とは真逆の、ほっとけなくて抱きしめたくなるジョーカーにそれが顕著に出ています。ジョーカーが、悪役のくせにとにかく可愛過ぎます。バットマンのライバルなのに、かなりのかまってちゃん。バットマンに相手にしてほしくてたまらん、という感じ。
そんなかまってちゃん的思いはバットマンに全然伝わっておらず、バットマンのある一言によって、ジョーカーは激しく傷ついてしまいます。自分にとって大切だと思っていた人は、さほど自分のことを重要には思っていなかったという事が、何気ない言葉でわかってしまう。この会話シーンのジョーカーは、ショックと強がりがないまぜのとっても繊細な顔演技をします。レゴブロックの涙目に、まさかこんなに感情移入していまうとは。思い出しても、泣きそうになるくらいの名演技。この顔は見るべし。
バットマンの孤独。レゴだからこそ、かき立てられる思い。
主役の「バットマン」も、心に大きな穴を抱えています。幼い頃に両親を殺された彼は、家族に近い存在である他者ですら遠ざけ、自分の世界のみで生きています。大企業の御曹司である彼は、がらーんとした大邸宅に1人で住み、ごはんはレンジでチンした食事、食事後はホームシアターでトム・クルーズの映画を鑑賞するだけの毎日。悪を倒すヒーローにしては、さびしすぎる毎日。他者に近づきたいけど、失うのが怖くて近づけない。バットマンの孤独は深い。
バットマンが静かにレンチンするシーンは、名シーンです。他のシーンは、異様にテンション高く、超アップテンポで進むのに、ここだけゆっくりじっくり見せます。レゴブロックという限定的な動作での至らなさが、また悲しさを倍増させるのです。
他者を受け入れるまでの葛藤と成長の物語。でも笑いの破壊力も抜群。
バットマンやジョーカーといった、寂しがりや人物たちが織りなす成長物語というヒューマンな一面もありますが、基本的には全面ギャグと笑いの連続による、コメディ映画。いろんな映画に出てくるキャラクターもぼんぼん出てくるし、DCコミックスのキャラも、マイナーなものまでたっくさん出ててきます。細か過ぎて正直よくわからないネタもありますが、バットマンの基本設定さえ知っていれば、誰でも楽しめて泣ける作品です。情報量もめちゃ多いため、超あっという間の100分くらいでございました。
この映画を見て・・・ささみのひとこと
どこのシーンのことかは、見たらわかります。