「レゴバットマン ザ・ムービー」/The LEGO Batman Movie/監督 クリス・マッケイ
制作:2017年/アメリカ/105分
声の出演: ウィル・アーネット/バットマン、ブルース・ウェイン
マイケル・セラ/ロビン、ディック・グレイソン
レイフ・ファインズ/アルフレッド
ロザリオ・ドーソン/バッドガール、バーバラ・ゴードン
ザック・ガリフィアナキス/ジョーカー
あらすじ
「レゴ」版のバットマン映画。
犯罪都市ゴッサムシティを悪者から守るヒーロー、バットマン。正義の味方である一方、素顔は寂しがりやなのに、不幸な生い立ちのせいで、他人に心を簡単に開けない気難しい一面も。そんな心寂しきバットマンの周りには、一風変わった少年ロビン、バットマンの悪敵ジョーカー、両親のいないバットマンを幼い頃から育てる執事のアルフレッドなど愉快な仲間たちがいる。ある時、悪敵ジョーカーがまた、ゴッサムシティを大変な目にしてしまい・・・。
おもちゃのレゴで繰り広げられる、れっきとした「バットマン」映画
レゴを題材にした映画としては、前作「LEGO(R)ムービー」がアメリカでも大ヒット。ポップなレゴ映画なのに、大人も意外に考えさせられる内容で、最後には泣けるわ、ギャグも冴えてるわで、かなり評価の高い映画でした。2作目のレゴ映画となる今回は、あの「バットマン」が題材。今回も、「レゴブロック」という身体性?を生かしたギャグや小ネタ満載で笑いつつも、最後には涙なしでは見られない、なめてはならない恐るべき映画になっていました。
「バットマン」といえば、クリストファ・ノーラン監督によりリメイクされた「ダークナイト」シリーズの大大ヒットが記憶に新しいですね。このノーラン流バットマン、2005年から3作品続きましたが、映画としては重め&暗めな印象で、特に2作目「ダークナイト」では、故ヒース・レジャーによる「ジョーカー」役の怪演と共に、「悪とは何か?」「正義とは何か?」という題材をずっしりと描いていました。それはそれでとっても面白くて傑作なのですが、これによりバットマンシリーズ=シリアス路線が定着化してしまいました。
「ジョーカー」のキャラが、良い意味で崩壊
ところがどっこい、今回の「レゴバットマン」は、とにかくポップで明るいです。ノーラン版のシリアスなジョーカー像とは真逆の、ほっとけなくて抱きしめたくなるジョーカーにそれが顕著に出ています。ジョーカーが、悪役のくせにとにかく可愛過ぎます。バットマンのライバルなのに、かなりのかまってちゃん。バットマンに相手にしてほしくてたまらん、という感じ。
そんなかまってちゃん的思いはバットマンに全然伝わっておらず、バットマンのある一言によって、ジョーカーは激しく傷ついてしまいます。自分にとって大切だと思っていた人は、さほど自分のことを重要には思っていなかったという事が、何気ない言葉でわかってしまう。この会話シーンのジョーカーは、ショックと強がりがないまぜのとっても繊細な顔演技をします。レゴブロックの涙目に、まさかこんなに感情移入していまうとは。思い出しても、泣きそうになるくらいの名演技。この顔は見るべし。
バットマンの孤独。レゴだからこそ、かき立てられる思い。
主役の「バットマン」も、心に大きな穴を抱えています。幼い頃に両親を殺された彼は、家族に近い存在である他者ですら遠ざけ、自分の世界のみで生きています。大企業の御曹司である彼は、がらーんとした大邸宅に1人で住み、ごはんはレンジでチンした食事、食事後はホームシアターでトム・クルーズの映画を鑑賞するだけの毎日。悪を倒すヒーローにしては、さびしすぎる毎日。他者に近づきたいけど、失うのが怖くて近づけない。バットマンの孤独は深い。
バットマンが静かにレンチンするシーンは、名シーンです。他のシーンは、異様にテンション高く、超アップテンポで進むのに、ここだけゆっくりじっくり見せます。レゴブロックという限定的な動作での至らなさが、また悲しさを倍増させるのです。
他者を受け入れるまでの葛藤と成長の物語。でも笑いの破壊力も抜群。
バットマンやジョーカーといった、寂しがりや人物たちが織りなす成長物語というヒューマンな一面もありますが、基本的には全面ギャグと笑いの連続による、コメディ映画。いろんな映画に出てくるキャラクターもぼんぼん出てくるし、DCコミックスのキャラも、マイナーなものまでたっくさん出ててきます。細か過ぎて正直よくわからないネタもありますが、バットマンの基本設定さえ知っていれば、誰でも楽しめて泣ける作品です。情報量もめちゃ多いため、超あっという間の100分くらいでございました。
この映画を見て・・・ささみのひとこと
どこのシーンのことかは、見たらわかります。