ささみファクトリー

新作を中心に、見た映画のあらすじと感想を製造します。肝心なところのネタバレはしません。食べたカレーの報告もします。

天才作家の妻/The Wife/ビョルン・ルンゲ監督


天才作家の妻 映画 ささみ


「天才作家の妻 40年目の真実」

2017/スウェーデンアメリカ・イギリス/101分

 監督:ビョルン・ルンゲ

出演:グレン・クローズジョナサン・プライスクリスチャン・スレーター など

  •  

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43  あらすじ

 

超ベテラン作家のジョゼフは、念願のノーベル文学賞を受賞した。長年彼を支えてきた最愛の妻ジョーンと息子と共に、授賞式が開かれるスウェーデンストックホルムに向かう。そこでジョゼフの経歴を追うジャーナリストと出会い、作家をめぐるある疑惑が持ち上がり・・・。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 サスペンスではなく、ある夫婦の関係性が主題

 

主演のグレン・クローズゴールデン・グローブ賞で主演女優賞を獲り、アカデミー賞でもノミネートされている事で、観に行ってきました。予告編の時点で「実は妻が書いている・・・」という設定はバラされていたので、「なんで妻が書いていたのか?」「どうやってバレたのか?その後は?」という謎がサスペンス混じりに描かれるのかなぁとぼんやり思っていましたが、案外そこはメインではなく、長年築いてきた夫婦関係がふと壊れて新たな関係へと向かう過程が、2人の巧みな演技や会話で丁寧に描かれていました。この2人の演技がすごい。

 

授賞式という非日常の数日を過ごす夫婦。そこで、普段我慢していた夫への思い、妻自身が長年溜め込んでいた葛藤が爆発し、感情を露わにするシーンは特にお見事でした。グレン・クローズの演技ももちろん見ものなのですが、ジョナサン・プライス演じる夫が、微妙に空気が読めないというか、ちょっと嫌悪感ある感じがリアルすぎるんですね。何かっていうとお菓子ばっか食ってるし、外には調子のいいこと言うし、女ずきだし。「コイツ、自分で書いてねぇくせにヨォ・・!!」と、グレン・クローズよろしく、微妙に噛み合わない夫にだんだん腹たってきました。こういうちょっとしたイラつきの積み重ねのうまさを、家族あるあるとして観てほしいです。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 「女性の名前じゃ本は売れない」

 

この映画は、夫婦が授賞式の為にストックホルムで過ごす数日間の「現在」と、まだ2人がわかりし頃、妻が小説を書くようになった頃の謎解き部分の「過去」をいったりきたりします。「過去パート」では、妻はまだ作家としての才能に胸膨らんでいた時代。さまざまな出来事を経て、夫との秘密の関係が始まっていくのですが、その一つが、ある人に言われるショックな一言。女性は「能力」で評価されない現実や、それが人々の無意識に当たり前の事として存在している不条理さを感じました。社会が女性に求めるのは能力ではなくて、「女性の役割」である現実は今も変わってないんじゃないかと思いました。「無意識の圧力」怖いです。

  

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 絶対言っちゃいけない一言を言っちゃう夫

 

ささみは見ながら思っていました。「40年も連れ添ったのに、なぜ授賞式まで妻は我慢できたのか?なぜここでその現実と向き合うことになるのか?」と。正直、秘密が生まれた背景に深みがちょっと足りなくて、しかも、なんで今までバレなかったのか?という所もちょっと突っ込みどころもありました。40年もそんな関係をしてたら、嘘つくのが当たり前すぎて今更何も感じないのでは?と思ったのですが、そんな妻でもある夫の一言にピッキーンとくる瞬間があるんですね。自分の存在証明として支えていて何かが、ガッシャンと崩れる演技、ぜひ見てほしいです。

 

 

この映画を見て・・・ささみのひとこと

ささみ 映画

 どこのシーンのことかは、見たらわかります。

 

 

グレン・クローズ代表作、未見です。】

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ジョナサン・プライスはこれに出てたのか!】

【才能ある妻に夫が嫉妬して・・というのはコレも同じ
 

コンドル/1975/シドニー・ポラック監督

コンドル 映画 ささみ




 

コンドル 

1975/アメリカ/Three days of the Condor/118分

 監督:シドニー・ポラック

出演:ロバート・レットフォード、フェイ・ダナウェイマックス・フォン・シドー など

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f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43  あらすじ

 

実はCIAの末端組織である「アメリカ文学史協会」にいるターナーロバート・レッドフォード)は、ある日昼メシを買いに出た隙に、何者かに仲間全員が銃殺される。 誰が何の目的で襲撃されたのかわからぬまま、ターナーはその場から逃げる。その後、CIA内部に裏切り者がいることがわかり・・

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 頼りない文系スパイをロバート・レットフォードが演じる「巻き込まれ型サスペンス」

 

80年代の大統領選を舞台にした「フロントランナー」をきっかけに、本物の70〜80年代の政治サスペンス映画を観たくなってレンタル鑑賞しました。

 

大統領の陰謀」で伝説のボブ・ウッドワード記者を演じたロバート・レッドフォードが主役。彼が働く「文学史協会」という牧歌的なオフィスに急におっかない顔の暗殺者が現れ、全従業員がめっちゃめちゃに銃殺されるところから物語が始まります。誰に、何故襲われたのかわからぬまま、コードネーム“コンドル”ことターナーがNYの街を逃げ回ります。だんだんCIA内部に裏切り者がいるとわかって・・・という展開。

 

ヒッチコック風のサスペンス的な内容で先が読めずに観れるのですが、面白いのが、このターナーさんが実戦経験のないちょっと頼りないスパイであること。なんでも、世界中の本を読んで暗号や機密情報が隠されてないかを調べる役回りとのこと。そんな非効率な仕事があるの?と思いますが、どうやらターナーは本当に知らぬ間に機密を読み当ててしまったらしい。途中で「オレ、本しか読んでないし・・!」と吐露したり、暗殺者には「どうせ本ばっかり読んでんだろ!」とイジられる。でも本を読んで得た知識によって、実戦経験もないのにピンチを切り抜けたりもして、軟弱なマスターキートン感もある。

 

今のボーンシリーズやミッションインポッシブルのようなアクションスパイ映画の主人公にはいないタイプの、事務方スパイ。陰謀に巻き込まれているのも、この人そんな重要な人物なのかな?とうっすら思いながらも、物語は進みます。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 おっかない顔の暗殺者の意外なプロ意識

 

ターナーが敵に追いかけられながらも、CIA内部の陰謀に気づき、真相に迫っていく後半。ささみがぐっときたのは、終盤でターナーが暗殺者とついに対峙したときのシーン。暗殺者がなぜかターナーを殺さない。なぜ?と問うと、「お前を殺すことは契約に入っていない」。「ヨーロッパに行けば、いい仕事があっておだやかに暮らせる」とターナーリクルートまでしようとする。え?そんなに誇りを持って、安定した仕事として暗殺やってたの?と驚き、一瞬プロフェッショナルのスガシカオが脳内にかかりそうになる。暗殺者なりのプライドを持って任務に当たっていたのですね。

 

今の政治サスペンス映画やドラマが大好物で毒されているささみからすると、ちょっとテンポもゆったりしてて、誰が敵味方なのかちょっとまどろこっしい印象もありましたが、考え方が分かれそうなラストは色々な解釈ができるし、今はないワールド・トレード・センターの象徴的な使い方など、2019年に見ても感じるところの多い、なかなかの秀作でした。

 

この映画を見て・・・ささみのひとこと

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【これもシドニー・ポラック監督】

【巻き込まれ型サスペンスといえば、ヒッチコックのこれが好き】

 

フロントランナー/The Front Runner/ジェイソン・ライトマン監督

フロントランナー 映画 ささみ

 

「フロントランナー」

2018/アメリカ/113分

 監督:ジェイソン・ライトマン

出演:ヒュー・ジャックマンヴェラ・ファーミガ、J・Kシモンズ など

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f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43  あらすじ

 

 1988年、アメリカ大統領選。アメリカの未来は、「ケネディの再来」と言われた最有力候補ゲイリー・ハートに委ねられようとしていた。しかし、ある一夜の報道によってその未来は崩壊していくーー。政治とメディアの関係を一変させた実話を基に描く政治映画。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 2018年にフィルムで撮った「1980年代政治映画」

 

実際の事件を基にした政治映画。 前半は、ゲイリー・ハートが大統領選最有力候補として、イケイケドンドンに選挙キャンペーンを回る様子がテンポ良く描かれます。編集もセリフなんせ早い。えーと、民主党の候補がゲイリーハートで、レーガンがいて・・・何て考えるとどんどん話は進みます。このテンポが気持ちよくて、アメリカの政治内幕もの映画としても楽しめます。

 

監督は70年代の政治映画「コンドル」や「大統領の陰謀」を参考にしたらしく、この映画もなんとフィルムで撮ったそう。フィルムならではの質感や80年代のファッションや機材の再現性もあって、パキパキしすぎない画にちょっとしたタイムスリップ感を感じられます。「80年代の映画館で映画みてるみたい!」とちょっとコーフン。ワシントンポスト内のシーンでは、「大統領の陰謀」の著者兼主人公でもあるボブ・ウットワード記者も出てきます。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 「私生活ではなく政策で語りたい」、中途半端に人間味のあるゲイリー・ハート 

 

爽やかで聡明で誰もが次期大統領と思っていた人のとある報道をきっかけに、メディアとの関係が変質していく後半。観客は、彼が大統領になっていない事を知っているので、どう大統領を断念していくかが後半の見どころとなります。現代の選挙では、大統領の素質として候補の人柄や私生活の清廉性(トランプ大統領は置いといて・・)が大切なのはなんとなくわかる。

 

劇中でも、「ワイドショーでは地味なスーツで」「奥さんと別居中はイメージが悪いので、仲良い写真を撮りましょう」などイメージを大切にしているシーンが出てくる。でも80年代後半は、まだ候補のイメージ戦略の重大性が現代ほど重要視されていない様子。何よりもゲイリー・ハート自身が、それよりも「政策」が大事だと信じて疑わない。彼が側近にスキャンダルの対応を、と再三言われても取り合おうとしない。スキャンダルの初期対応につまずき、彼はみるみるうちに混乱に巻き込まれていく。

 

「選挙」と「政治」が異なることをゲイリー・ハートはまだ分かっておらず、真っ直ぐに国民と向き合おうとする姿勢は、ただのいい人。「政治」では優秀かもしれないけど、「選挙」では狡猾になりきれなかったゲイリー・ハート。この人がもし選挙にずるさを取り入れていたら、めちゃめちゃ優秀な政治家になったのではないか・・・と思わせる。「もっとずるくていいんだよ!」とスクリーンに向かって、何度思ったことか・・。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 白でも黒でもない人間模様を描くジェイソン・ライトマン映画

 

 監督は「JUNO」や「マイレージ・マイライフ」「ヤングアダルト」などの ジェイソン・ライトマン。ささみは、この監督が実は大好きなのです。一見普通に生活している人の、社会への適応がちょっと不器用なところを見事に表現してくれます。あなたの不器用さはそのままでいいんだよ、と映画で教えてくれてるような気がします。この映画も、スキャンダルによって落ちていく候補の様子を描くのかなと思ったら、実は違います。彼と彼を取り巻く人間たちのそれぞれの視点での葛藤が、実に見事に描かれています。

 

この監督の特徴は、登場人物を「いい人」「悪い人」にわけずに、グレーのまま描くこと。人間の感情と行動は、善と悪にきっぱり分けられるものではないと教えてくれます。この映画では、候補、メディア、スタッフ、奥さん、スキャンダル相手など、それぞれの立場の人が、それぞれの本音を腹に抱えて、政治とメディアの変質する関係に巻き込まれていきます。当事者たちも自分たちがどんな戦いに巻き込まれているかわかっていない。全員がこれは正しいのだろうかと疑いながら、行動を進めていっているように見えます。その行動の結果として、後戻りできない地点が1988年にはあったのだと気付かされます。2019年に生きるささみはこの映画を見る事で、「選挙」が変わった瞬間を目撃した気持ちになりました。

 

 

この映画を見て・・・ささみのひとこと

ささみ 映画


 

 どこのシーンのことかは、見たらわかります。

 

 

ジェイソン・ライトマン監督の出世作

 

 

【監督作品のなかでこれが一番好き&ぐさっとささる】

 
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アメリカ政治映画と言えば、これがいちばん】

 

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特捜部Q カルテの番号64/クリストファー・ボー監督

特捜部Q ささみ 映画



 

「特捜部Q カルテ番号64」

2018/デンマーク・ドイツ/100分

 監督:クリストファー・ボー

出演:ニコライ・リー・コス、ファレス・ファレス など

  •  

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43  あらすじ

 

デンマークで1000万部以上を売り上げる大ヒットミステリー小説「特捜部Q」の映画化第4作。過去の未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署「特捜部Q」。ある日、マンションの一室から死後12年経ったミイラ死体が発見される。遺体の身元を追っていくと、かつて存在した少女達を隔離するある島の存在と組織が浮かびあがって・・。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 北欧ミステリ✖︎バディ刑事もの

 

渋谷で開催されている「未体験ゾーンの映画たち」で鑑賞しました。デンマークのミステリ映画ということで気になり調べてみると、今回の「特捜部Q」はシリーズ4作目だそうだが、基本的な設定だけ知っていれば途中からでもOKと見かけたので見に行ったら、これは当たり。

 

主人公は、ちょっと神経質な刑事・カールと、アラブ系移民のアサドの2人組。この2人のバディが「特捜部Q」という新部署で過去の難事件を解決していくという分かり易い設定。あれ?「相棒」?と思う設定ですが、「相棒」のとっつきやすさをまずパラっと落とし、ぐっとシリアス&社会派にして、やたら寒くて寂しい場所を舞台にした感じ。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 100分で楽しめる本格ミステリ映画

 

このシリアス版相棒は、起きる事件も一筋縄ではいきません。事件のきっかけとなる身元不明遺体を辿ると、かなり前から行方不明になっている女性たちの存在が複数浮かび上がります。彼らに共通していたのは、孤島にある女子隔離施設。その背後には、男性優位主義と移民排斥を是とする、ある大物の存在に行き着きます。この社会問題の取り入れ方が見事で、スリリングなストーリーに実際の社会が抱える病巣を加わって重みを増します。

 

ちょっと身構える映画かなと思いつつも、事件解決までのストーリー運び、ラストの動きのある展開、ちょっとグロテスクな描写もスパイスがあり、これがあっという間なんです。粗野なカールを「ええにょぼ」的に支えるアサドのキャラクターも良くて、カール&アサドコンビをすぐ好きになります。この複雑なお話をダラダラせずに100分でまとめてくれてありがとう!

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 寒そうなコペンハーゲン

 

もう一つの主役は、コペンハーゲンの街そのもの。とにかく寒そう。コーヒーうまそう。灰色で寒そうな街で起きる凄惨な事件、というだけでワクワクしませんか?ささみは、します。「ドラゴンタトゥーの女」などが好きな方は、絶対見るべきです。1〜3作目も映像配信サービスでも割と転がっているので、一気見しましたが、この4作目がいちばんまとまっておススメです。

 

 

 

この映画を見て・・・ささみのひとこと

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 どこのシーンのことかは、見たらわかります。

 

 【シリーズ1作目 行方不明になった女性議員を捜索して・・】 

特捜部Q 檻の中の女(字幕版)
 

 

 【シリーズ2作目  名門寄宿舎学校で何が】

特捜部Q キジ殺し(字幕版)
 

 

 【シリーズ3作目 Netflixにもありました】

 【原作本最新作 第七弾まで出ているようで読んで見たいです】

 

特捜部Q―自撮りする女たち― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

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2018ベスト映画3

ささみが2018見た新作映画で特によかった5本を列挙します。

 

1  スリー・ビルボード

2  シェイプ・オブ・ウォーター

3  ボヘミアン・ラプソディー

4  フロリダプロジェクト 真夏の魔法

5   アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル

シェイプ・オブ・ウォーター 映画

 

 


ささみ 映画 「弱きものが自分のプライドを賭けて戦うイヤー」だった2018

 

ささみは、俗に言う「ホワイトトラッシュ」ものが好きです。「ホワイトトラッシュ」とは、アメリカの貧しい白人のことを指しますが、映画でもよく取り上げられる題材です。社会的に弱かったり、差別される側の人が、人にバカにされたりうまく社会に馴染めなくても、一筋の自分が自分たるプライドをもって何がしかと戦う物語は、胸をアツくする名作が多いと思っています。また主人公が対峙する問題が「貧困」や「差別」といった社会問題ではなくても、自分が犯した罪やウィークポイントと向き合い、昇華していく様を見事に描く映画に特に心惹かれます。というか、それが観たくて映画を見ているのかもしれません。

 

ささみ 映画 主人公の性格が悪いほど、映画が面白くなる

 

2018のベストに選んだ上位作品はほとんどそればっかりです。往々にして、「マイノリティーががんばる系」の良い映画は主人公の性格がとんでもなくひねくれていて、やたらと誤解を生みがちです。「スリー・ビルボード」も、トーニャ・ハーディングを主人公にした「アイ、トーニャ」も、とんでもなく性格悪くて、すぐ嘘つくし、問題解決の手段が殴るとか放火するとか暴力に頼っちゃう。そんな厄介者でも、一瞬ふと何かを背負った者しか見せない、ドキッとするまなざしを見せるんですね。「スリービルボード」も「アイ、トーニャ」も後半にそういったシーンがあるのですが、それは観客にしか見えない。自分の犯した事や運命を引き受けるような、一瞬の表情に、ああこの人が背負っているのはこんなに重いものなんだ、それに孤独に戦っているんだと思えてしまいます。そのシーンをぜひ見てほしいです。

 

ささみ 映画 声なき者の声を聴けるのが、映画

 

ボヘミアン・ラプソディ」「シェイプ・オブ・ウォーター」「フロリダ・プロジェクト」も、貧困や性的マイノリティ、聴覚障害など社会的には隅に追いやれてしまいがちな人たちが主人公です。特に「シェイプ・オブ・ウォーター」は深夜に働く掃除婦の女性が主人公。その主人公がアマゾンの半魚人と恋する物語。この「道ならぬ恋」は、さまざまな障害だらけ。そもそもそんな話、映画になるの?と観る前は思っていました。しかし、この恋物語をとってもとってもロマンティックに描いたギレルモ・デル・トロ監督さすがです。音楽や美術にもこだわりぬいたこの物語世界にとっても癒されました。社会の真ん中にいそうな白人の美男美女の恋じゃなくて、「見えないようにしている人たち」の切実な生き方に心うたれ、自分の中で大切にしたい映画のひとつになりました。

 

 

キングスマン ゴールデンサークル/マシュー・ボーン監督

キングスマン  ささみ  映画

 

キングスマン ゴールデンサークル」

2017/イギリス/140分

 監督:マシュー・ボーン

出演:コリン・ファースジュリアン・ムーアタロン・エガートン
マーク・ストロングハル・ベリー

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43  あらすじ

 

上品な紳士服店が実は地下のスパイ組織だった・・・というイギリス製スパイアクションコメディ映画の続編。007よりもぶっ飛んだグロテスク描写やブラックユーモアがとっても楽しい、新しいスパイ映画シリーズ。今回は謎の闇組織「ゴールデンサークル」に、主人公達が所属するスパイ組織「キングスマン」が襲われる。助けを求めた先は、アメリカだったー。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 2作目も全然イケる、スーツで闘うスパイアクション映画

 

大ヒットした前作は、とにかくぶっ飛んだグロ描写と、音楽を使ったポップで爽快なアクションが気持ち良くて、久しぶりに爽快なスパイ映画を有難う!という感謝の念を抱く稀有な作品でした。みんな好きですよね、この映画は。

 

2作目は、舞台をアメリカに広げ、ちょっとスケールアップ。風呂敷を大きく広げてしまった為、上映時間も長くなってはおりますが、スパンスパン殺りくしてしまう思い切ったグロ、何が起きているのか判別付きやすいアクション、やりすぎって位のブラックユーモアはあいも変わらずで、キングスマンに欲しい要素はこれだよ!というものはほぼ満たしてくれます。

 

前作を見ていない人でもなんとなく背景をさらっとネットで読んでいけば、まあまあ大丈夫。でも、前作でキーになったある2人が今回大活躍するので、余裕があれば前作をDVDでチェックしてから行くことをおススメします。

 

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 影の主役「マーク・ストロング」に萌える

 

その一人が、スパイ組織「キングスマン」の事務方支援要員のマーリンです。主人公にハイテクスパイアイテムを享受したり、パソコンをカチャカチャして様々なデータを調べたりと、主人公を鉄壁な後方支援ぷりで支えてくれます。長身でスーツをビシっと着こなす、つるっ禿げマーリンはクールだけど優しき頼れるおじさまです。萌えます。

 

演じる役者は、マーク・ストロングというハゲおじさまです。この人は、割と「スパイ組織でのじゃじゃ馬主人公に悩まされる優しき中間管理職役」が多い気がします。いつも何だか、組織の論理と破天荒な若手主人公の板挟みになって、ちょっとまいったなーという困り顔をしています。「部下   困る  板挟み  組織  中間管理職  スパイ」で検索すると「マーク・ストロングですか?」とコンピュータが答えてくれそうなペルソナ感です。

 

今回も相当現場に困らされるだけでなく、マーリン自身の身に大変な危機が訪れます。これまで彼自身のピンチをこんなに真っ向から描く作品はあまり無かったと思います。こんなにマーク・ストロングを楽しめる度は過去最大級です。くたびれたスーツインテリおじさん好きにおすすめしたいです。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain:w43 チャニング・テイタムが踊る映画にハズレなし

 

 今回新たに活躍する、アメリカのスパイ機関「ステイツマン」に所属する諜報員役に、チャニング・テイタムというムキムキ俳優が出ています。頭空っぽそうな、カウボーイ役でかなりおバカちゃんでその名も「テキーラ」。典型的な能天気アメリカ人をブラックユーモアで描いています。

 

このチャニング・テイタム、もともとイケメン俳優枠でシリアスな役もできますが、最近はコメディに出てキレっキレに踊るんですよね。伊達に男性ストリッパー出身ではありません。ささみはおもっています、「チャニング・テイタムが踊ると、ハズレなし」と・・・。今回ももちろん踊っているので、この映画はいい映画と言えます。

 

 

この映画を見て・・・ささみのひとこと

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 どこのシーンのことかは、見たらわかります。

 

 【大ヒットした全作】

キングスマン(字幕版)

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 【監督のマシュー・ボーンと言えば、コレ】

 

 

 

 

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」/Guardians of the Galaxy Vol. 2/監督 ジェームズ・ガン

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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」

制作:2017/アメリカ/136分

監督・脚本ジェームズ・ガン

出演: クリス・プラットゾーイ・サルダナ、デビッド・パウティス、ヴィン・ディーゼルブラッドリー・クーパー

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain   あらすじ

 

アメコミ会社マーベル が送る、星の数ほどある実写化映画シリーズの一つ「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の第二弾。4人のはぐれ者がひょんなことから出会い、なぜかこの4人が銀河を救う事になってドタバタを繰り広げていくコメディ。今回はガーディアンズチームの主人公ピーター・クイルの父親を巡って、またドタバタ。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain とにかく楽しい、見ているだけで幸せ。

 

待ってました、この続編を。前作がもう大大大傑作だったので、とても期待しておりました。もともとこの原作、マーベルの中でも地味な漫画だったようで。かつ日本版予告が超絶つまらなそうだったため、「なんじゃこりゃ、見ないわ」と思っていましたら、「超絶面白い」という評判がすぐに伝わり、その後は何度も見ています。食わず嫌いはいけませんね。

 

カラフルな宇宙の描写、70年代音楽のセンス良い気持ち良すぎる使い方、また音楽とアクションの興奮のピークとストーリー上の盛り上がりがうまくハマっており、何も考えずに誰でも楽しめてグッとくる120分。面白い映画に必要な要素のほぼ全て満たしているんじゃないかなと思ってしまいます。

 

よく「スター・ウォーズ」に並ぶスペース・オペラ作品と評されていますが、あの頃の「スター・ウォーズ」がリアルタイムではない 、80年代生まれのささみ世代には、「ガーディアンズ〜」が同時代で一緒に楽しめるスペースオペラかもしれません。(一昨年からのスター・ウォーズ新シリーズは、「まだおかず残ってたの!?」的なご褒美感覚です)

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain 楽しいだけではない、4人がそれぞれ背負っているもの。

 

SF作品なのに、ポップな映像と音楽が散りばめられた楽しい作品ですが、一番の魅力は、主人公4人のそれぞれのキャラクターの面白さをうまく配したストーリー。

 

主人公のピーター・クイル(別名スター・ロード)は、幼い頃に地球からさらわれた過去があり、その後宇宙で窃盗をしながら生きています。彼の宝物は、地球で病床の淵のお母さんからもらった肩身のウォークマン。中にはお母さんが編集したヒットソングのテープが。このテープを聴いている時が、彼と微かな記憶中の家族が繋がる時。アライグマのロケットも詳しく説明されないが、悲しい過去を引きずっており、また女性の殺し屋ガモーラも複雑な生い立ち、もう一人のメンバードラックスは、妻子を殺されている。

 

こんな、それぞれ傷を追ったはぐれ者が宇宙で出会いチームとなり、強大な敵と戦う。しかも音楽と映像のセンスが抜群、という類稀な作品がガーディアンズ・オブ・ギャラクシーです。脚本・監督をどちらも担当したジェームズ・ガン、ありがとう。

 

f:id:sasami_333:20170421173430j:plain こんな「家族」に入りたい。

 

今回の2は、前作で隠されていたピーター・クイルの父親が出てきます。一見、強そうで暖かさを持った父親に見え、彼はチームを置いて父親の元へ行きます。しかし、父親にはとんでもない裏がありました。実の親だけどトンデモない父親と、父親のように彼を育ててくれていた存在、そして大人になった彼が自力で作った「ガーディアンズ」というはぐれ者たちの「家族」。ピーターは今回の戦いの中で、なにを見つけるのか?ギャグの連発の中にも、要所要所で4人の小さくない傷を見せられてグッと気持ちをつかまされました。

 

この映画を見て・・・ささみのひとこと

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                                                                                                  どこのシーンのことかは、見たらわかります。